地蔵している時は一番辛い。
声も掛けれず自分の出来なさ、
普段抑圧していた嫌な感情が沸々とこの瞬間から湧き上がる。
『さっさとやれよ!何やってんだ!怠けるなよ!』
『いい加減、悩んでばかりいないで行動しろ!』
『そんなんじゃ人生変わんねよ!』
声も掛けれず何も行動できない自分をそう急かし、焦らせ無理やり行動させようとした。
ハッキリいってこれは相当辛かった。
こんな状況の中、ナンパなんてしたくなかった…本心ではそう言ってるのに気付かない振りをしていた。
何故なら自分が嫌いだったからだ。ありのままの自分が。
本来ナンパするのは楽しい時間なはずなのに、自分をとことん追い込み無理やりテンション上げるために活動していた。
そのせいか全くやる気も起きず、もっとやれ頑張れそれじゃダメだと更に自分を苦しめ、益々地蔵が悪化するようになった。
いつの間にか自分を苦しめる代用として、地蔵をするようになっていた。今までの自分はそうだった。
だが、これからは違う。
ある時、自分を認めることが出来ない私を、
『あなたはとても素晴らしくて価値がある人なのよ。』
『大丈夫だよ。よく頑張ったね。偉いね。』
最高の褒め言葉だった。
生まれて母親からもそんなこと言われたことないのに、彼女だけが励ましてくれた言葉だった。
しかし当時の私はそんなこと聞く耳持たず、また彼女に対して素直になれず、
『そんなわけないだろ!』『うるさいなぁ』と。
彼女を否定して受け入れる事が出来なかった。
本当は根っから自分のことが大嫌いで認めたくなかった。
ただ自分を認めたくなかったんだ。
★
そうして月日は流れ、彼女はもう目の前には現れず。
おもむろに心の中で彼女が教えてくれた言葉を呟いた。
『あなたはとても素晴らしくて価値がある人なのよ。』
『大丈夫だよ。よく頑張ったね。偉いね。』
そう心の中で唱えると今まで散々もがき苦しんだ自分はもうそこ
ただ安らぎが起こり、自分はココに居ていいんだ。大丈夫なんだ、このままでいいんだ、
その瞬間に癒しが起こり、奇跡が訪れたのだ。
あの苦しくてここに居場所が感じられなかった自分への苦しみが嘘のように
今まで騒がしかった心の中は何もないスペースへと生まれ変わり、やがて静寂へ変わった。
あるのは『無』だけだった。
私はただただぼんやりとその気持ちいい安らぎの感覚に浸っていた。
そうしてぼんやりしてると目の前にメッチャくちゃタイプの子が現れ、すぐに声を掛けていた。
今までとは打って変わった感覚でその様は清々しかった。
さっきまではただ怖くて通り過ぎていく女性に全く声が掛けれなかったのに。
一体何だったんだろう。